アインシュタインと原子爆弾の関係

 原子爆弾は、アインシュタインが開発したかのように思っている人がいるようです。
 そこまでいかなくても、アインシュタインの相対性理論によって原子爆弾が作られたとか、自らの理論を証明するために原子爆弾の開発を進めたという言説を良く目にします。

 原爆開発の責任をアインシュタインに押し付けて、批判する人までいます。

 実際はどうなのでしょうか? とりあえず、わかっている事実だけを挙げて、私の考えを示したいと思います。

相対性理論と原子爆弾

原子爆弾発明の経緯

 原子爆弾は、ウランの核分裂(ヒロシマ型原爆)を利用したものです。核分裂は1938年に、ドイツの科学者オットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンが発見しました。

 その後、大量のウランを使うことで、核分裂反応が連鎖的に起こる可能性が見出されました。連鎖的というのは、ひとつのウラン原子が核分裂すると、それを引き金に次々と核分裂反応が誘発され、一気に大量の核分裂反応が起こるという現象です。
 それを使ったのが原子爆弾です。

 そして、1941年にアメリカでマンハッタン計画が始まり、1945年の広島、長崎の悲劇につながります。

E=mc2との関係

 アインシュタインが特殊相対性理論から、E=mc2の関係を導いて発表したのは、1907年です。この式は、エネルギー全般に関する公式であり、特に原子核に関する公式ではありません。

 核分裂が発見される30年も前のことですから、核分裂に関する理論でないことは明確ですし、この式から核分裂反応が予想されるものでもありません。

 もちろん無関係という訳でもありません。

 ウランの連鎖的な核分裂を利用した爆弾を作れる可能性がみつかったときに、「本当にこの爆弾ができれば、どれほどのエネルギーになるか」という計算に、E=mc2が使われました。

 相対性理論と原爆の関係はこれだけです。相対性理論から原爆が導かれるものではありません。

アインシュタインと原子爆弾のかかわり

マンハッタン計画

 アインシュタインは、マンハッタン計画には携わっていません。

 しかし、アインシュタインは原爆開発と無関係ではありません。
 1939年に当時の科学者たちがルーズベルト大統領に送った、原子爆弾の開発を提言する手紙に署名しています。そのような爆弾が作れる可能性があるから研究に着手すべきという提言です。
 そのときに、科学者たちはどんな爆弾ができる可能性があると考えていたかを示す文章を引用します。

その爆弾は巨大なものになり、飛行機による爆撃は不可能と思われるものの、船によって輸送して爆発させた際には港湾施設等を広域にわたって破壊しうる
Wikipediaより

 このとき原子爆弾の開発は見送られました。まだ情報が少なかったのです。

 そして、実際に原子爆弾ができる可能性が高まり、1941年になってマンハッタン計画が始まりました。

ドイツの状況

 1939年、まだ原子爆弾ができる可能性も固まっていない状況にもかかわらず、アメリカにいる科学者たちが、大統領に手紙を出したのは何故でしょうか?

 ドイツを動向を睨んでいたのは間違いありません。手紙の中にも記述があります。

 当時、ドイツがウランの販売を停止した状況などから、ドイツが国家単位で原子爆弾の開発を進めていると判断していたのです。

 実際に、1939年からドイツは原子爆弾の開発を進めており、その判断は間違っていませんでした。

 ドイツは核反応の研究の最先端を進んでいた国です。その国が、原子爆弾の開発を進めていたのです。この頃には、ドイツ国内にいたユダヤ系の科学者(アインシュタインも含めて)は、ドイツを離れていましたが、それでも優秀なドイツ人科学者も沢山います。

 その状況を見過ごすことができずに、手紙を送ることになったと考えられます。

アインシュタインは原子爆弾の生みの親か?

アインシュタインの責任

 アインシュタインがいなければ、広島や長崎の悲劇はなかったかもしれません。

 でも、アインシュタインは避難されるほどの関与をしていたのでしょうか。

 彼の言説は、色々残っています。平和活動に携わったり、原爆に関する言葉も残しています。

 ただ、アインシュタイン本人を知っている訳ではありませんので、それらの言葉が本音かどうかなどわかりません。

 わかっている事実を元に、どのくらいの責任があるのか各々で判断するしかありません。

 間違いない事実としては、

彼が発見したE=mc2が、原爆のエネルギーの計算に使われたこと

1939年にルーズベルト大統領に出した手紙にアインシュタインも書名したこと

実際の原爆開発には全く携わっていないこと

 です。

 このことから、アインシュタインにどの程度の責任があるのか各々で判断して下さい。

個人的な意見

 私は、広島出身の中年です。私の親の世代は、実際に原爆を体験しています。

 親は離れた場所にいたので被ばく者ではありませんでしたが、祖父母は被爆者ですし、父親の兄弟には原爆の犠牲になって亡くなった人もいます。

 近所のおじさん、おばさん、学校の先生、実際に原爆を体験した人が見の周りに大勢いる環境で育った人間です。

 そんな私でも、アインシュタインを責める気にはなりません。

 手紙に署名したことは確かです。

 しかし、あの時期にナチスドイツが原子爆弾の開発を行っていることを知って、ユダヤ人であるアインシュタインが「船によって輸送して爆発させた際には港湾施設等を広域にわたって破壊しうる」爆弾の開発を進める提言に署名に参加するのは、当然のように思えます。

 そんな環境にいるにもかかわらず「原爆開発に積極的に参加しなかった」、それだけで充分です。