人工知能が近未来に人間を超えるこれだけの理由

 レイ・カーツワイルは、2020年代半ばに人工知能の知性が人間を超え、2045年には、技術的特異点を迎え、人間の理解を超えると予言しました。

 2020年代半ばと言えば、後十年です。本当にそんな近い未来に、人工知能が人間を超えるのでしょうか? 私は、十年あれば人間を超えると確信しています。

 私は人工知能の理論などほとんど知らない素人です。

 しかし人工知能自体を知らなくても、一般的な科学技術の進化を考えるだけで、近い将来人工知能が人間を超えるだろうことは充分予測できるのです。

 その理由について説明してみましょう。

人工知能は技術の臨界点を越えていること

技術の臨界点とは

 科学技術は、ある臨界点を超えると進歩が大きく加速します。人工知能は、その臨界点を超えているので、今後加速度的に進化していくことは間違いありません。

 技術の臨界点とは、次のふたつの基準をクリアした段階のことを言います。

1.技術の方向性が見えること

2.産業上の利用が出来ること

 これらについて簡単に説明したいと思います。

技術の方向性が見えること

 科学技術は、当初は手探り状態からスタートします。

 そして、そのうちいくつかの方向性が見えてきます。しかし、この段階では方向性に確信は持てませんし、実現可能かどうかも確信できません。

 いくつか見つかっている道のうちどの道を進むべきか、あるいはどの道も選ばず新しい道を探すべきか、迷いながら自分が進む道を歩くしかありません。

 その状態が続いた後、多くの人が「この道を進めばいい」と確信する時点が訪れます。これが、「技術の方向性が見えること」です。こうなると、技術の進歩は一気に速くなります。

 その道の先には、まだ大きな障害があるでしょう。
 道が大きく曲がって思わぬ方向に進むことになるかもしれません。

 そんなことはどうでもいいのです、今進んでいる道が(今のところ)正しいと信じる人が一定数を超えることが重要なのです。

 そうなると、世界中の研究者がその道を開拓し始めるようになる、それが進化を加速させる鍵なのです。

 もしかしたら、今の道よりも近道があるかもしれません。

 でも、少人数が確信のない疑心暗鬼のまま近道を進むより、大勢が同じ道を切り開きながら、状況に応じて軌道修正した方が早くゴールに到達できるのです。

産業上利用出来ること

 応用分野があることが、技術の進化に大きな影響を与えることは言うまでもありません。

 その点、人工知能は申し分ありません。

 現在でも、広く利用されています。一歩先に進むだけで、応用範囲が広がります。

 このような分野は、人や金をつぎ込む企業は増えますし、研究機関も予算を獲得しやすくなりますので、プレイヤーも、使える資産も潤沢です。

 そして、その周辺分野にも人が集まり、その結果も研究にフィードバックされるようになります。

 こうなると勢いは止まりません。普通なら不可能と思えるほどの壁もあっという間に乗り越えていくことは、歴史が証明しています。

 これを産業牽引力と呼びます。

人工知能の進化は指数関数的であること

人工知能は青天井

 科学技術には、物理的な上限のあるものと、上限がないものがあります。例えば、自動車の燃費を上げるとか、太陽電池の発電効率を上げるという技術は、理論的な限界があります。このような技術では、進歩の速度はどこかで頭打ちになります。

 しかし、人工知能には限界はありません。限界のない青天井の技術は、臨界点を超えると指数関数的に進化します。

 象徴的なのは、ムーアの法則です。大規模集積回路の能力が一年半で倍になるというものです。でも、当初ムーアが考えていた道を、現在まで真っ直ぐ進んだ訳ではありません。

 ひとつの技術が限界に近づいても新しい技術を組み合わせることで、現在でも指数関数的な成長を遂げています。

 カーツワイルは、指数関数的な進化はムーアの法則に限らないことを示しました。

 しかし、そのような理論に関係なく、私たちは、大規模集積回路以外のIT技術も臨界点を超えた後に指数関数的に発展するさまを、実際に目の当たりにしています。

自己触媒機能

 触媒とは、化学反応で反応速度を高める効果を持つもののことです。触媒の一種に自己触媒というものがあります。これは反応する物質そのものが触媒の効果も併せ持っている場合に使われる言葉です。

 人工知能は明らかに自己触媒機能を併せ持ちます。

 人工知能開発を効率化するために、人工知能を使うことができるのです。ですから人工知能が進化すると、さらに人工知能開発が効率化されて、技術進化のスピードが上がるという自己触媒機能を持つのです。

 このことからも、人工知能の進化は指数関数的に進むことは間違いありません。

 ちなみに、もし人工知能の進化が指数関数的であり、能力が一年で倍になるとしましょう。すると10年後では1000倍の能力になります。

 現在の状況をみてみると、一年で倍よりも早いスピードで進化しているように思えます。もし半年で倍なら、十年後には100万倍です。

 現在の100万倍なら「人間を超えた」と感じる人の方が多数派になるのではないでしょうか?

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