地球は閉鎖系か? 開放系か? 熱力学と進化論を巡る議論の誤解

*この記事は、不適切な表現があるため訂正予定です。

 熱力学第二法則によって進化論は否定されるという主張が間違いであることを、これまで説明してきました。

 そのための情報を探しているときに「地球は閉鎖系か? 開放系か?」という議論を見かけました。完全な閉鎖系ではないことは意見が一致しているようですが、「閉鎖系とみなすことができるか」というところが争点のようです。

 はっきり言います。地球は誰が何と言おうが完全な解放系です。閉鎖系とみなすことなどできません。

 何故こんな誤解が広がっているのでしょうか?

閉鎖系、解放系とは何か?

 熱力学第二法則が進化論を否定するって本当か?で説明しましたが、簡単に復習します。熱力学第二法則は、俗にエントロピー増大の法則と呼ばれています。

 熱力学によれば、エントロピーが増加するのは、外部環境から切り離された閉鎖系と呼ばれる状態でのことです。これとは別に、外部と何らかのやりとりを行っている場合を開放系と呼び、開放系ではエントロピーが減少することもあります。

 このエントロピー増大の法則と、生命を絡めて話をするときに、地球は閉鎖系か解放系かという議論が出てくるようです。

人間は解放系

 ちなみに人間は開放系です。食べ物も飲み物も摂取せず、酸素も取り入れない状態では生命を維持することはできません。

 エントロピー増大の法則は、俗に「秩序ある状態が無秩序になる」とか「乱雑になっていく」と表現されます。

 人間は、常に秩序を作りだしています。言ってみれば、エントロピーを減少させています。しかし、開放系なのでエントロピー増大の法則には反しません。

 命を失ってしまうと、秩序だって形成されていた身体が朽ちていきます。これはエントロピーが増大していくことに相当します。

 人間に限らず生物は、開放系で命を保っている間は、エントロピーを減少させることができる存在なのです。

開放系で乱雑さが減少するということ

 エントロピーは乱雑さと言われています。部屋を放っておくとどんどん乱雑に散らかっていくというイメージで、エントロピー増大の法則が説明されることが多いようです。

 私はこの説明には一貫して異議を唱えているのですが、開放系でエントロピーが減少することをこのイメージで捉えている人も多いようです。

 部屋を閉め切っている場合(閉鎖系が)では、部屋の中は乱雑になる一方です。しかし、部屋空いていて、室内に散乱したものを外に出せば、室内の乱雑さは小さくなります。

 これを続けていると、そのうち部屋の中に何もなくなります。

 でも開放系ですから、外からものを補充できます。

 バラバラに散らかったものを外に出し、替りに整理されたものを室内に取り入れれば、ものはなくならず、乱雑さを低下させることができます。

 これが一般的に考えられている、開放系でのエントロピー低下です。

地球の場合はどうなのか?

 生き物は開放系です。しかし、生物が進化することで、どんどん乱雑ではない秩序だった生き物になっていくことが、エントロピー増大の法則に反するという主張があります。

 そのときに、地球が開放系か閉鎖系かということが問題になっているようです。

 さて、地球は開放系でしょうか、閉鎖系でしょうか?

 宇宙から、隕石が落ちてくることがあります。それを考えれば完全な閉鎖系ではありません。しかし、その程度のことは無視できて、地球は閉鎖系とみなせると主張する人がいます。

 いや、熱力学を学んだことのある人からすると、信じられないような主張です。

 これも、「エントロピーは、乱雑さや無秩序さを示す」という、通俗的な説明の弊害でしょう。

 開放系か閉鎖系かを考えるときに問題になるのは、物質だけではありません。

 エネルギーも考慮しなければなりません。

 特に熱という形で、エネルギーが移動する場合はエントロピー増大の法則が成り立たない閉鎖系です。

 外部に熱という形でエネルギーが移動することで、エントロピーが低下するのです。

 それを続けると、エネルギーが低下していくので、外からエネルギーを補充しなけらばなりません。そのとき、エントロピーの小さいエネルギーを補充して、エントロピーの大きいエネルギーを外に出せば、内部のエントロピーは減少しても問題ありません。物質の場合と同じです。

 同じ熱でも、高温の物体からの熱ほどエントロピーが小さいのです。

「エントロピーは、乱雑さや無秩序さを示す」と思っていると、このことが理解しずらいのです(詳しくはエントロピー増大の法則は、乱雑になる方向に変化するというものではないを参照ください)。

地球は熱移動を行っているか?

「熱のやりとりがあれば開放系だと言うが、地球は熱の授受をしているのか?」

 という疑問が湧くかもしれません。

 地球の周囲は宇宙空間です。真空です。真空の熱って何でしょう。

 熱の伝わり方には三つの種類があります。「熱伝導」「対流」「輻射」です。

 この中で「輻射」は、真空中でも伝わるものです。

 物質は、その温度に応じた電磁波を放出しています。その電磁波によって熱を伝えるのが、輻射です。

 ちなみに、光も電磁波の一種です。

 と言えばわかるでしょう。

 地球は常に太陽光を受けています。

 ちなみに太陽光は、5,800度という高温からの電磁波です。地球は5,800度という高温の熱を受け取っているのです。

 もちろん、熱を受け取るだけではありません。そんなことをしていれば、地球はすぐに灼熱地獄になります。

 地球は、その温度に応じた電磁波を宇宙空間に放射しています。その電磁波は赤外線の領域で、エネルギーは太陽から受け取るエネルギーとほぼ同じです。だからこそ、地球はほぼ一定の温度に保たれているのです。

 もう一度言います。

「同じ熱でも、高温の物体からの熱ほどエントロピーが小さいのです」

 地球は、5,800℃という高温の熱を受けとり、せいぜい数十度の熱を放出しているのです。

 エントロピーの小さいエネルギーを貰い、エントロピーの大きいエネルギーを放出し続けているのですから、完全な開放系です。

 そのエントロピー差は膨大です。

 無視することなど、できないレベルです。

物質の移動に置き換えて考えてみる

「エントロピーは、乱雑さや無秩序さを示す」というイメージに異を唱えている立場ではありますが、このことを少し乱雑さと絡めて説明してみます。

 光は、光子という粒子と捉えることができます。粒子なら物質と考えていいでしょう。

 高温の物体から放出される光ほど、波長が短くなります。そして、波長が短いほど光子のエネルギーが高くなります。

 地球は、太陽からの波長の短い光子を受とり、波長の長い光子を放出しているのです。そして、そのエネルギーは同じです。

 太陽から受け取るのは、波長が短くひとつの光子が持つエネルギーが大きい光です。同じエネルギーなら、ひとつの光子のエネルギーが大きければ光子の数は少なくてすみます。

 そして、ひとつの光子のエネルギーが小さい赤外線として、宇宙空間に放出しています。このときの光子の数を多くなります。

 言ってみれば、少ない光子を補充して、沢山の光子を放出しているのです。

 数が少ないものと、数が多いもののどちらが乱雑でしょうか。同じ散らばり具合なら、沢山ある方が乱雑さも大きいと考えていいでしょう。

 そう考えれば、地球が開放系であり、地球内部でエントロピーが減少しても何の問題もないことがわかると思います。

 最後に注釈です。

 光子に関して「同じ散らばり具合なら沢山ある方が乱雑さも大きいと考えていいでしょう」と言いました。

 あくまでも「同じ散らばり具合なら」です。

 熱による輻射光なら「同じ散らばり具合なら」と考えても問題ありません。

 でも、光はそれだけではありません。

 レーザー光などは「同じ散らばり具合」とはかけ離れた光です。

 ここでの説明は、全ての光に適用してはいけないことに注意して下さい。

コメント

  1. kmd より:

    閉鎖系は物質の移動はしないが、熱エネルギーのやり取りはしますよ。地球は閉鎖系です(それこそ隕石の飛来などは無視するとして)。
    閉鎖系を間違った意味で捉えて、無意味なエントリ書いてませんか? 大丈夫ですか?
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%BB_(%E8%87%AA%E7%84%B6%E7%A7%91%E5%AD%A6)
    http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/LifeRh/01/ALifePhysicalLaws.html

  2. リケイ人 より:

    kmd様
    ご指摘ありがとうございます。
    確かに不適切な表現でした。
    進化論が熱力学に反すると主張するサイトに「地球は閉鎖系なのでエントロピーが増大するはず」といった表現がよくあるので、それに対する反論がこの記事の趣旨です。
    しかし、波長の短い電磁波(光子)を吸収して、波長の長い電磁波(光子)を放出するという過程を物質の移動に例えるのは強引でした。
    通常の熱の出入りとは違うということを、どうやって伝えるべきか再考してみます。

    「地球は閉鎖系で、閉鎖系の場合は熱としてエネルギーを失う場合にのみエントロピーは減少できる、地球はエネルギー収支はほぼ0でエネルギーを失うわけではない、従って地球のエントロピーは増大する」
     熱力学の初歩だけでは一見正しく思える主張なので、何とかして分かりやく否定したいので。