マクスウェルの方程式、電磁気学の不思議。

 マクスウェルの電磁気学は、ガリレイの相対性原理を満たしていません。
 そのため、アインシュタインの特殊相対性理論が提出されるまで、電磁気現象は相対性原理に縛られないと考えられていました。
 相対論の意味することを理解するためにも、マクスウェルの電磁気学とガリレイの相対性原理の関係を少し考えてみましょう。

電磁気学と相対性原理

右ねじの法則

 マクスウェルが完成させた電磁気学と、ガリレイの相対性原理を合わせて考えると不思議な結果が得られます。

 電磁気学の理論によると、電荷を持った物体が動くとその周囲に磁場が発生します。物質の移動方向に対して渦を巻くような磁場です。中学校で習う「右ねじの法則」というやつです。

右ねじ

 これはあきらかに、ガリレイの相対性原理とは矛盾します。電荷を持った物体と同じ方向に同じ速度で動いている人からみれば、物体は止まっています。
 電荷が動くことで磁場が発生するので、物体が止まっていれば磁場は発生しません。

 Aさんから見ると磁場が発生していて、Bさんから見ると磁場が発生していない、じゃあ、実際はどうなの? と言いたくなります。

 別に光の速度がどうのこうのという難しい話ではありません。「右ねじの法則」や「フレミングの左手の法則」のように中学校の理科の時間に習う電磁気現象の話です。

 慣性系が変われば、物体の動く方向や速さが変わります。相対性原理が成り立つとすれば、人によって、発生する磁場の向きや強さが違うというおかしな結果になります。

 普通に考えれば、電磁気現象については相対性原理は成り立たないのです。

磁場は発生しているのか?

 電磁気現象については相対性原理は成り立たないということは、慣性系によって電磁気の法則は変わるということです。マクスウェルの法則が成り立つのは、色々ある慣性系の中のひとつだけだということになります。

 もしそうであれば、マクスウェルの方程式が成り立つ慣性系を基準として、その基準に対して電荷が動いていれば磁場が発生すると考えるのが妥当です。

 少なくとも、人によって、磁場があったりなかったり、方向が違ったり、大きさが違ったりする、というよりは納得しやすいでしょう。

 しかし、私たちは基準に対して動いていないとは限りません。というより、地球の動きなどを考慮すると、基準になる慣性系に対して動いていると考える方が自然です。

 ですから、私たちが観測する現象をきちんと説明するためには、基準系に対して動いている系からみたときの理論が必要になります。

 慣性系が変われば、電磁気の法則も変わるのであれば、どのように変わるのか、それをはっきりしなければならないのです。しかし、マクスウェルの方程式を他の慣性系から観測するとどうなるか、それを表す理論を作るのは非常に難しいことなのです。

マクスウェル方程式の不思議な性質

右ねじの法則の実験

 簡単な実験をやってみましょう。

磁石

 図のように円形に方位磁石を並べ、その中を電荷を持った物質を動かします。すると、電荷が動くことによって渦状の磁場が発生し、方位磁石は円を描くような向きを示します。これは基準に対して止まっているAさんの視点での説明です。

 次に、この物体と同じ速度で動いているBさんから見た場合を考えてみましょう。この場合も方位磁石の向きは円を描かなければなりません。
 同じ現象を、AさんがみたときとBさんからみたときで、方位磁石の向きが違うなんてことはあり得ません。

相対性原理がなりたっていない場合

 相対性原理がなりたっていないとすれば、この解釈は簡単です。

 Bさんからすると、

・自分から見ると物体は止まって見える

・しかし基準に対しては動いている

・基準系に対して動いてるので磁場が発生している

・それによって方位磁石の向きは円を描く

 そう解釈するだけです。

 前述のように上手く理論を作ることはできていないとしても、解釈自体は単純です。

Bさんが勘違いしていた場合

 ここで、Bさんが自分が基準に対して止まっていると考えていたとします。

 その場合、Bさんは次のように解釈するでしょう。

・電荷を持った物体は動いていないので磁場は発生していない。

・しかし電荷の周りには電場が発生している。

・その電場の中を磁力を持った方位磁石が動いている。

・電場の中を磁石が動くと力が発生し磁石は円を描く方向を向く。

 なんと、Bさんが自分が止まっていると解釈しても、結果は同じになるのです。方位磁石の向きを変える要因は違いますが、最終的に表れる現象は同じなのです。

 以前の記事(相対性理論を理解する第一歩 相対性原理とは?)の中で、相対性原理が成り立っていなければ、実験するたびに結果が異なることを説明しました。
 やるたびに異なる結果が得られるような現象を物理法則としてまとめることなど到底できません。
 電磁気学が理論化できたのは、慣性系が違っても、この最終的に表れる現象は同じという特徴があったおかげだともいえます。

電磁気学も相対性原理が成り立っている?

 だとすれば、電磁気学もガリレイの相対性原理が成り立っていると考えることはできないでしょうか? 慣性系によって、電場だったり磁場だったりという解釈は違っても、最終的に表れる現象は同じマクスウェルの方程式で計算できる、と考えるのです。

 そうすれば、マクスウェルの方程式が他の慣性系からみるとどのように変化するのか、という難問も考える必要がなくなります。

 しかし、そう上手くはいきません。慣性系が違っても最終的に表れる現象は同じというのは、近似的なものです。計算結果がぴったり一致するわけではありません。

 でも、なんか不思議です。

 基本的にガリレイの相対性原理とは完全に矛盾する理論であるにもかかわらず、得られる結果はガリレイの相対性原理に近い。

 このあたりに解決の糸口がありそうな気がしませんか?